スイスの給与明細と税金の話


今回の内容はこんな感じ。

  • スイスの給与ってどのくらい?
  • 手当は?
  • 給与から引かれる費用は何がある?
  • 所得税はどうなってるの?
  • その他絶対必要なやつ
  • 締め

  

2022年くらいから海外移住がより大きなトレンドになりそうですね。

というのも日本では実質賃金が下がり続けている中で、サラリーマンでやっていく場合、この先のことが非常に見えづらい。収めている税金で社会保障制度が機能している実感が持てず、精神的な将来への不安やこれまでの生活が物理的に維持できないことが予想される。円高を維持できなくなると円安が進んでいよいよ不景気になる。社会にゆとりがなくなると、犯罪が増える。そして都市部ではゲーテッドコミュニティに住めるか住めないかで大きく、生活の質が変わる。そんな世の中、なんだかいやですよね。

 

これは日本だけのことではないけれど、AIやロボットの進化が止まらない中、今自分がやっている仕事、あるいは自分の専門領域が5年後に通用するのかどうかもわからない。

 

日本の「景気後退やQOL(クオリティオブライフ)の低下」と「人を使わず成果を出せる事業が増える」

この2つの動向が次第に顕著になってくれば、地方移住、海外移住がますますトレンドになってくるはず。

地方移住は、IターンUターンという言葉がもう十数年前からあるように、今は人生の選択肢の一つとして持っている人も多いはず。

 

海外移住はどうか。これはビザの問題も出てくるため、なかなかハードルか高い。そして本当に必要な情報がまだ十分でない。僕が海外での生活を憧れていたとき、特にお金にまつわる情報があまりなかった。

 

今回はそのお金の部分、特に給与とそれに関連する税金の話です。

 

  • スイスの給与ってどのくらい?

 

税金の計算するために25歳未婚無宗教の日本人がベルン州で働くことにします。

スイスでサラリーマンやっていると大体こんな感じの給与明細になると思います。

ちなみにこれは僕が勝手に作りました。

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「25歳未婚無宗教の日本人がベルン州で働く」さんの給与明細

キャリアがなくて専門性がなくても採用されるポジションであれば、gross(もろもろ引かれる前の給与)でCHF4000くらいかな。もちろんそれ以上もらえるところもあるけれど。日本で同じ条件で見たらgrossで22万くらいですかね。大手スーパーで未経験の人がフルタイムで働く場合、CHF3’900からCHF4’100が初任給のようです。

実はスイスは連邦政府として最低賃金を定めていないんです。でもなぜだか給与が良い。このあたりの話はまた今度書きます。

 

  • 手当は?

日本はたくさんの手当がありますよね。

通勤手当や業務手当や役職手当や配偶手当や扶養手当や残業手当や住居手当や特別手当。めちゃくちゃたくさんあるな。

スイスは結構簡単で月給制の場合、本給これです、これで週5日働いてください。以上。と言う感じ。通勤手当は基本的に最初はないと考えた方がいいです。

役所関連の仕事やIT関係の仕事、ある程度のポジションであれば通勤手当が支給されるところが多いと思います。その場合、住んでる場所の鉄道会社にもよりますが、だいたいスイス国鉄の区間指定なし、GAと言われる電車バス乗り放題パスが支給されます。本給の他に年に1度ボーナス出すよと言うところが多いです。これはだいたい月給の金額が支給されます。それゆえ「13ヶ月目の給与」という言い方したりします。毎年11月か12月に入金されるか、あるいは12ヶ月で割られた金額が、月々給与に加算されます。

時給制の場合は時給算出するのにもう少し、項目増えるので別の機会にします。

ちなみに子供手当はスイスもあります。州によって金額大きく違いますが、子供1人につき月CHF200前後です。

その他職責によって手当つけているところもありますが例外だと思った方がいいです。スイスの一般的な手当は大体こんなものかと思います。

 

  • 給与から引かれる費用は何がある?

給与から引かれる費用は、だいたい日本と同じで老齢/遺族年金、失業保険、などの社会保険費です。一応、それぞれしっかり書いておきます。

 

AHV 老齢/遺族年金・・・国がやってる老齢と遺族年金のために払うもの。5.275%で誰しも率同じ。

 

ALV 失業保険・・・基本1.1%。年収CHF148'200を超えると、パーセンテージが段階的に上がっていく。

 

NBU 労災保険・・・1.543%。このパーセンテージは業種と雇用主によって変わるけど、年齢では変わらない。だいたいこのくらいの数字の前後

 

BVG 企業年金基金・・・日本の厚生年金的なもの。老齢/遺族年金では将来制度が持たないので、導入されたもの。月収CHF1’777.50以上、年収CHF21'330以上かることになる。

月収CHF1’777.50以上、年収CHF21'330以上から強制的に加入しなければならないので、週2日とかの勤務でなければ、これも給与から引かれることになる。

 

年齢によって金額が変わる。25-34歳で7%、35-44歳で10%、45-54歳15%、55-65歳で18%という具合に上がり、最大18%。

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計算方法は自分のGrossの年収を出した後、CHF24'885を引いて、プラスが出ないようであればCHF3'555に自分の年齢の%をかけた金額が、企業年金として引かれる。

引いた後の数字がプラスになればそこに自分の年齢の%をかける。例えば年収CHF40'000であれば、BVG対象の金額はCHF15'115、これに自分の年齢の%をかける。年収がCHF85'320以上あると、CHF60'435が上限になって、それ以上BVGの対象となる金額は上がらない。年収CHF100'000でも、控除される企業年金基金は年収CHF85'320の人と同じ。

 

まぁややこしいんで手取りイメージするときにCHF150くらいはこの項目で引かれると思っていれば良いと思います。

 

病気で休んだ際の給与補償のための保険・・・雇用主によって控除するかしないか決めていい。レンジは0.4%から4%まで。月給制でこれを設けているところは少ないと思う。なので、ここでは加味せず。

 

  • 所得税はどうなってるの?

所得税は、源泉徴収または確定申告で払わなければいけません。

 

源泉徴収で所得税的なものを月々払わないといけない人は誰か?

外国人で滞在ビザがLだったりBだったりすると源泉徴収として毎月自動的に給与明細から引かれます。スイス人やEU国籍の人と結婚している人、スイス滞在が長くてCビザの人、以外は源泉徴収。

 

どうやって決まってるか?

州、宗教、結婚や子供の有無で決まる。年齢では決まらない。上記の条件で見たら8.54%。これは累進課税。例えば月CHF10'000稼ぐと17.01。月収CHF50増えると0.05%から0.06%上がっていく設計です。どこまでの収入が載っているのかリストが見たらCHF300'000が上限で36.86%でした。紙面の表記の都合上ここまでしか載せられないのだろう。金持ちが多いスイスはこれに収まらない人がいっぱいいる。

源泉徴収の%載っている政府のサイト載せておきます。Tarife herunterladen

 

 確定申告で所得税的なものを払う場合は?

スイス国籍の人や滞在ビザC、あるいは結婚した相手がそのどちらかだったりする人。ちなみに確定申告する場合は、源泉徴収はされなくなる。スイスは実は全国民が年に1回確定申告をする国なんです。理由は、役所がすると役所の煩雑な手続きが増えて費用が増えるから。ということらしく、頑なに全員必ず年に1度確定申告制度を維持しています。これに基づき納税金額が決まります。これは日本で言うところの所得税です。源泉徴収に当てはまらない人は、みんな確定申告しています。

確定申告の金額はSteuerberechnung natürlicher Personenここで計算してください。控除項目がどのくらいあるかにもよるけど、大体年収の10%から17%くらいが所得税的なものとして持っていかれます。

 

  • その他絶対に必要なやつ!

その他絶対必要な月々の費用として医療保険があります。スイスで住むには誰もが健康保険に入らなくてはなりません。義務です。日本のように国が維持する皆保険ではなく、民間が維持する実質的な皆保険になっています。民間の医療保険会社に申し込んで、プランを選んで契約します。

民間なんでそれぞれ価格差がありますが、補償内容が少ないものであれば月々だいたいCHF200くらいです。

 

さぁ、どのくらい給与残るのだろうか。

 

タターン!!!CHF3’300!!!114円(2020年9月18日現在)換算で37万6200円!!

 

「25歳未婚無宗教の日本人がベルン州で働く」さんの手取りとして自分の元に残ります。

 

 どうですか日本での給与と比べると多く感じませんか?日本でGross22万円だと17万円前後ですかね。

ぼんやりとスイスは税金高いイメージありますが、スイスも日本も控除される割合は20%前後でほぼ同じです。

 

これを資本に毎月やりくりします。この金額、夢ありますよね。

 

ここから家賃や食費やらを払っていくわけですが、スイスは物価が高いことで有名です。このあたりのことは別の記事で書きたいと思います。

 

  • 締め

サラリーマンになりたての頃は、給与明細を見るのが毎月楽しみで、上から下までじっくり見てましたが、今はどうでしょう。もちろん給料日はいつも待ち遠しいけど、今は昇給があっても大体数字の予想がつくので、給与明細を見る楽しみが減ってしまいました。

それどころが、日本では、サラリーマン向けの税金やら社会保険やらのアップデート頻度が多くて、控除金額が上がるばかりで手取りが減って見るとネガティブになるよな。社会はもちろん支えたいけど、肌で感じる費用対効果がなさすぎるよな。

特にコロナのような社会全体の危機があると本当によくわかる。皆さんはどうですか。

 

ではまた。